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東京高等裁判所 平成6年(行ケ)219号 判決

滋賀県大津市丸の内町2番36号

原告

株式会社イーグレツク システム

同代表者代表取締役

山口善章

同訴訟代理人弁理士

大塚康徳

松本研一

丸山幸雄

東京都千代田区霞が関3丁目4番3号

被告

特許庁長官 荒井寿光

同指定代理人

江塚政弘

長島孝志

吉野日出夫

及川泰嘉

主文

1  特許庁が平成4年審判第24230号事件について平成6年8月4日にした審決を取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第1  当事者の求めた裁判

1  原告

主文同旨の判決

2  被告

(1)  原告の請求を棄却する。

(2)  訴訟費用は原告の負担とする。

第2  請求の原因

1  特許庁における手続の経緯

原告は、昭和62年2月16日名称を「出力インタフエース装置」とする発明(以下「本願発明」という。)について特許出願(昭和62年特許願第31584号)したところ、平成4年8月14日拒絶査定を受けたので、同年12月28日審判を請求し、平成4年審判第24230号事件として審理されたが、平成6年8月4日「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決があり、その謄本は、同月31日原告に送達された。

2  本願発明の要旨

情報処理装置より印刷装置への出力フオーマツトに従った印刷情報及び少なくとも前記印刷装置に対する制御情報を含む出力情報を受信する受信手段と、

該受信手段で受信した出力情報中の前記印刷装置に対する制御情報を解析する解析手段と、

該解析手段による解析結果に従って、前記印刷装置への出力フオーマツトに従った印刷情報を対応する1ビツト走査行毎のイメージ情報に変換して出力する変換出力手段とを備え、

該変換出力手段は、受信手段で受信した情報処理装置より印刷装置への出力フオーマツトに従った印刷情報中にキヤラクタコードが含まれている場合には該キヤラクタコードを対応するイメージパターンに変換してパターン展開すると共に、イメージ情報はそのままパターン展開して横1ドツト行毎に出力することを特徴とする出力インタフエース装置(別紙図面1参照)

3  審決の理由の要点

(1)  本願発明の要旨は、前項記載のとおりである。

(2)  昭和58年特許出願公開第225766号公報(昭和58年12月27日出願公開、以下「引用例」という、別紙図面2参照)には、

コンピユータが出力した画像情報をオンラインで伝送して回線端のフアクシミリ受信機が画像を記録する画像情報の伝送装置に関する発明が開示され、そこには、「この発明は、従来の伝送装置の上記の欠点を除去するためになされたものであって、コンピュータが入力データを処理して送出した出力信号を、ファクシミリ受信機で処理できる記録信号に変換して、この記録信号をファクシミリ受信機が接続された回線に送出する変換装置を設けて人手操作の介在を除去する事により、中継操作の手間を省いて大量の画像情報を迅速正確に伝送出来る画像の伝送装置を提供するのを目的としている。

以下、この発明の一実施例を第3図を用いて説明する。

図に於いて(1)と(2)は従来の同符号と同じものである。

(13)はコンピュータであって、入力データを処理する処理機(1)の端末に文字出力機(14)が接続されている。

(15)は文字出力機(14)に付属するインターフェースであって、文字出力機(14)が画像表示器の画面に形成した画像を出力紙(9)上にプリントするために送出するハードコピー信号を利用する事により、画像を走査して得た画情報を含む出力信号を送出する。

(16)は変換装置であって、その中に画像情報読取機(17)と画情報メモリ(18)と字素信号発生回路(19)と信号変換回路(20)とが直列に接続されて収容され、コンピュータ(13)の出力に接続されている。

画像情報読取機(17)は、コンピュータ(13)の処理機(1)が入力データを処理して得た画像を文字出力機(14)のインターフエース(15)が画情報として出力する出力信号を入力して、この出力信号から画情報を一語ずつ読み取った順序に画情報メモリ(18)に送入する。

画情報メモリ(18)は、画像情報読取機(17)から送入される画情報を一旦メモリ内に記憶して蓄え、ファクシミリ受信機(12)が処理できる速度で順次一語宛読出してこれを字素信号発生回路(19)に送入する。

字素信号発生回路(19)は、画情報メモリ(18)から逐次送入される一語一語をファクシミリ受信機が一字として処理できる字素に分解して、更にこれをシリアルドットデータに変換して字素記号を形成して、この字素記号を信号変換回路(20)に送入する。

信号変換回路(20)は、字素信号発生回路(19)から送入された字素記号を帯域圧縮等ファクシミリ装置として必要な信号処理を施してファクシミリ信号を形成し、このファクシミリ信号をファクシミリ受信機(12)に送入すれば、ファクシミリ受信機(12)が直ちに用紙の表面に画像を印字できる印字信号に変換してその出力端より出力する。

この変換装置(16)の中には更に回線制御機(21)が設けられ、信号変換回路(20)と多数のファクシミリ受信機(12a)、(12b)、…、(12n)に接続された多数の回線(22a)、(22b)、…、(22n)の信号入力端との間に接続されている。」(同公報2頁左下欄11行ないし3頁右上欄3行)と記載されている。

(3)  そこで、本願発明と引用例記載の発明とを比較検討する。

本願発明と引用例記載の発明とは、共に、コンピユータを含む情報処理装置が入力データを処理して送出した出力信号を、シリアル情報出力装置の1種であるフアクシミリ受信機で処理できる記録信号に変換して、この記録信号をフアクシミリ受信機が接続された回線に送出することを目的とするものであり、本願発明の「情報処理装置」、「受信手段」、「変換出力手段」は、引用例記載の発明における「コンピユータ(13)」、「画像情報読取機(17)」、「字素信号発生回路(19)と信号変換回路(20)及び回線制御機(21)」にそれぞれ対応する。

それ故、両者は、

「情報処理装置より印刷装置への出力フオーマツトに従った出力情報を受信する受信手段と、該受信手段で受信した出力情報中の印刷情報を対応するイメージ情報に変換し出力する変換出力手段とを備える装置(出力インタフエース装置)」である点で一致する。

そして、次の点で相違する。

〈1〉 印刷装置への出力情報を、本願発明では出力フオーマツトに従った印刷情報及び少なくとも前記印刷装置に対する制御情報を含む出力情報としているのに対し、引用例では、出力紙上にプリントするために送出するハードコピー信号というように、単に、出力情報とのみ表現している点。

〈2〉 本願発明では、受信手段で受信した出力情報中の前記制御情報を解析する解析手段を有するのに対し、引用例では、解析手段と明示していない点。

〈3〉 本願発明では、解析手段による解析結果に従って、前記出力情報中の前記印刷装置への出力フオーマツトに従った印刷情報を対応する1ビツト走査行毎のイメージ情報に変換出力手段が変換し出力し、さらに該変換出力手段は、受信手段で受信した情報処理装置より印刷装置への出力フオーマツトに従った印刷情報中にキヤラクタコードが含まれている場合には該キヤラクタコードを対応せるイメージパターンに変換してパターン展開すると共に、イメージ情報はそのままパターン展開して横1ドツト行毎に出力するとしているのに対し、引用例では、そのように詳細に記載されていない点。

(4)  そこで、次に上記各相違点について検討する。

〈1〉 相違点〈1〉について

コンピユータを含む情報処理装置から出力される印刷装置向けに送られる出力情報は、一般に、漢字キヤラクタデータ、文字パターンデータあるいはイメージデータ等の印字する信号そのものの印刷情報と、印刷にあたり文字の種類、印字形式あるいは記録紙のどの部分に印刷するか等の制御情報を含むことはきわめて普通のことであり、この2つの情報により所望の印刷がなされるものである。したがって、引用例には、格別、出力紙上にプリントするために送出する出力情報を印刷情報と制御情報からなると明記はしていないが、引用例記載の出力情報にもこれら2つの情報を含むことは、当該技術分野の当業者にとって自明のことにすぎない。

〈2〉 相違点〈2〉及び相違点〈3〉について

確かに、引用例では、解析手段として明示していないが、シリアル情報出力装置の1種であるフアクシミリ装置では、送信側の情報がキヤラクタコードであればそれをイメージパターンに変換してパターン展開すると共に、イメージ情報であればそのままパターン展開して送出するものである。したがって、引用例記載の発明においても、印字する信号そのものの印刷情報の印刷にあたり、文字の種類、印字形式あるいは記録紙のどの部分に印刷するか等の制御情報を読み取り判断する機能(即ち、本願発明の「解析手段」に相当)を、例えば変換装置(16)に有することは、特に記載がなくても理の当然のことである。

また、印刷情報をイメージ情報に変換し、パターン展開して出力する際に、1ビツト走査行毎のイメージ情報に変換し、横1ドツト行毎に出力することは、当該技術分野の慣用手段である。

そして、コンピユータを含む情報処理装置から出力される印刷装置向けに送られる出力情報をシリアル情報出力装置の1種であるフアクシミリ装置に送信するに際して、情報処理装置の印刷装置に出力されるものと同等のものをフアクシミリ装置で再現しようとするならば、前記印刷装置への出力フオーマツトに従ったイメージ情報を対応するイメージ情報に変換してパターン展開しなければならないことも当該技術分野の常識から当業者が容易に首肯できるところにすぎないので、この点も格別のことではない。

(5)  したがって、本願発明は、引用例記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

4  審決の取消事由

審決の認定判断のうち、(1)、(2)は認める、(3)のうち、一致点及び相違点〈1〉の認定は争う、相違点〈2〉、相違点〈3〉の認定は認める、(4)のうち、印刷装置向けに送られる出力情報について、一般に印刷情報と制御情報を含むことがきわめて普通のことであることは認めるが、その余の判断は争う、(5)は争う。

審決は、引用例記載の発明についての技術内容を誤認し、本願発明と引用例記載の発明の一致点についての認定を誤り、相違点〈1〉ないし相違点〈3〉に対する判断を誤り、その結果、本願発明は引用例記載の発明から容易に発明し得たとの誤った結論を導いたもので、違法であるから、取り消されるべきである。

(1)  取消事由1(一致点の認定の誤り)

〈1〉 審決は、「本願発明と引用例記載の発明とは、共に、コンピユータを含む情報処理装置が入力データを処理して送出した出力信号を、シリアル情報処理装置の1種であるフアクシミリ受信機で処理できる記録信号に変換して、この記録信号をフアクシミリ受信機が接続された回線に送出することを目的とするものであり」と認定した。

しかしながら、本願発明においては、受信手段は「情報処理装置より印刷装置への出力フオーマツトに従った印刷情報及び少なくとも前記印刷装置に対する制御情報を含む出力情報を受信する」と記載されているのみであり、情報処理装置よりの出力信号が、入力データを情報処理装置で処理したものであっても、予め情報処理装置に保存されたものであっても、いずれの信号でもよいのであり、本願発明においては、出力信号は「入力データを処理して送出」したものに限られず、予めコンピユータ等が保持しているデータを処理して送出したものも含まれる点、及び、後述するように、この「出力信号」、「処理」、「変換」の内容等が引用例記載の発明とは相違しており、最終的な出力信号がフアクシミリ受信機で受信可能な「イメージ情報」である点が一致しているのみである。

〈2〉 審決は、続いて、「本願発明の「情報処理装置」、「受信手段」、「変換出力手段」は、引用例記載の発明における「コンピユータ(13)」、「画像情報読取機(17)」、「字素信号発生回路(19)と信号変換回路(20)及び回線制御機(21)」にそれぞれ対応する」と判断した。

しかしながら、これら各構成の内容及び動作は全く異なっており、それぞれが対応するものではない。

〈3〉 審決は、上記〈1〉及び〈2〉の認定を前提として、「それ故、両者は、「情報処理装置より印刷装置への出力フオーマツトに従った出力情報を受信する受信手段と、該受信手段で受信した出力情報中の印刷情報を対応するイメージ情報に変換し出力する変換出力手段とを備える装置(出力インタフエース装置)」である点で一致する」と判断した。

しかしながら、本願発明は、「情報処理装置より印刷装置への出力フオーマツトに従った印刷情報及び少なくとも前記印刷装置に対する制御情報を含む出力情報を受信する受信手段を備える出力インタフエース装置」に関する発明であることに大きな特徴を有しているものであり、かかる装置であるが故に、続く「解析手段」、「変換出力手段」の各構成を備えているものである。

これに対し、引用例記載の発明は、審決記載のごとく、「コンピユータが入力データを処理して送出した出力信号を、フアクシミリ受信機で処理できる記録信号に変換して、この記録信号をフアクシミリ受信機が接続された回線に送出する変換装置」の発明であり、コンピユータより送出されるのは「入力データを処理して送出した出力信号」である。

この出力データの出力部分の構成及び信号の具体的な内容としては、引用例には、「(15)は文字出力機(14)に付属するインターフェースであって、文字出力機(14)が画像表示器の画面に形成した画像を出力紙(9)上にプリントするために送出するハードコピー信号を利用する事により、画像を走査して得た画情報を含む出力信号」(2頁右下欄7行ないし12行)の記載、及び、「画像情報読取機(17)は、コンピュータ(13)の処理機(1)が入力データを処理して得た画像を文字出力機(14)のインターフエース(15)が画情報として出力する出力信号を入力して、この出力信号から画情報を一語ずつ読み取った順序に画情報メモリ(18)に送入する。」(同欄17行ないし3頁左上欄2行)と記載されている。

そうすると、引用例記載の発明では、文字出力機(14)と変換装置(16)とを接続するためにはインターフエース(15)を必要とするということであり、このインターフエース(15)の仕様等に関して引用例には他に特別の記載がないことより、このインターフエースは、汎用性等を有する一般的な仕様のインターフエースではなく、文字出力機(14)に変換装置(16)を接続するために特別に設計された専用のインターフエースであると推察される。即ち、当該技術分野では、仕様が一般的なものである場合にはその旨を明確にする必要があり、かかる記載がない場合には、その接続機器のために特別に設計された専用のインターフエースである事実があるからである。

また、この専用のインターフエース(15)より出力される引用例記載の出力信号は、「画像を走査して得た画情報を含む出力信号」であり、「変換装置(16)は、コンピュータ(13)が形成した画像を電気信号で表示した出力信号で画像情報読取装置(17)、画情報メモリ(18)、字素信号発生回路(19)、信号変換回路(20)及び回線制御機(21)を通じてその波形を変換して回線(22)に送入する」(同公報3頁左下欄8行ないし12行)の記載と、第3図の変換装置の内部構成で明らかなごとく、すべてが直列的に処理されており、入力信号により異なる経路の処理を行うことはなく、本願発明の「変換出力手段」の構成におけるごとくにキヤラクタコードとイメージ情報が混在する場合があることを想定したものではないことも明らかである。

このように、引用例記載のインターフエース(15)は、特別に変換装置(16)のために設計されたものであり、出力情報は単なる「画情報」であり、断じて印刷装置への出力フオーマツトに従った印刷情報及び少なくとも前記印刷装置に対する制御情報を含む出力情報ではなく、変換装置(16)は入力信号により異なる処理を行うものではない。

なお、審決は、相違点〈1〉として、「印刷装置への出力情報を、本願発明では出力フオーマツトに従った印刷情報及び少なくとも前記印刷装置に対する制御情報を含む出力情報としているのに対し、引用例では、出力紙上にプリントするために送出するハードコピー信号というように、単に、出力情報とのみ表現している点」と認定した。

しかしながら、上記したように、引用例記載の出力情報は、印刷装置への出力フオーマツトに従った印刷情報及び少なくとも前記印刷装置に対する制御情報を含む出力情報ではなく、コンピユータが入力データを処理して画情報として出力する出力情報でしかない。上記相違点〈1〉中の引用例記載の発明についての認定には誤りがある。

(2)  取消事由2(相違点〈1〉ないし相違点〈3〉に対する判断の誤り)

〈1〉 審決は、相違点〈1〉につき、「引用例には、格別、出力紙上にプリントするために送出する出力情報を印刷情報と制御情報からなると明記はしていないが、引用例記載の出力情報にもこれら2つの情報を含むことは、当該技術分野の当業者にとって自明のことにすぎない」と判断した。

コンピユータを含む情報処理装置より出力される印刷装置への出力フオーマツトに従った出力情報は、印刷情報と制御情報より構成されることは、原告も争わない。

しかしながら、引用例には、印刷装置という文言等は全く記載されておらず、上述のように、引用例記載の出力情報はハードコピー信号に含まれる画情報を利用して生成された画情報を含む出力信号であり、この信号が印刷装置向けの情報であるとする審決の認定を認めることはできない。

本願発明は、特定仕様のデータではなく、汎用性のある印刷装置用に準備されたデータを直接に受け取りこの汎用性のあるデータよりドツトシリアルのデータを生成して出力するものである。

これに対し、引用例記載の発明は、その都度特別のプログラムにより変換装置向けに生成された表示されている汎用性のない特定フオーマツトの画情報を受け取ることができるのみである。

〈2〉 審決は、相違点〈2〉及び相違点〈3〉に対する判断においても、引用例記載の出力信号を印刷装置向けの印刷情報及び制御情報であると誤認している。

審決は、「キヤラクタコードであればそれをイメージパターンに変換してパターン展開すると共に、イメージ情報であればそのままパターン展開して送出する」ことは自明であるとしているが、引用例には、キヤラクタコードであるかイメージデータであるかを判断することについては何一つ記載がなく、引用例記載の発明において出力されるのは、単なる「画情報」であり、上記2種の情報であるとすることは到底できない。

第3  請求の原因に対する認否及び被告の主張

1  請求の原因1ないし3は認める、同4は争う。審決の認定判断は正当であり、審決に原告主張の違法はない。

2(1)  取消事由1(一致点の認定の誤り)について

〈1〉 原告の主張に反論するまえに、引用例記載の「ハードコピー信号」、「インタフエース(15)」の用語の意味、「インタフエース(15)は、文字出力機(14)が送出するハードコピー信号を利用する事により、画像を走査して得た画情報を含む出力信号を送出する」旨の記載について検討する。

イ. 「ハードコピー信号」について

「ハードコピー」とは、「計算機内の情報を人間が読める印刷物の形で出力し、内容のコピーを作ることであり、プリンタ出力はその代表的な例である。」と説明されている。(乙第1号証参照)

これによると、計算機(コンピユータ)内の情報の「ハードコピー」を印刷装置から出力させるためには、「ハードコピー」を得るための情報、即ち、印字される内容そのものに関する情報と、印刷にあたり文字の種類、印字形式あるいは記録紙の印字箇所に関する印刷装置に対する制御情報等を計算機(コンピユータ)内で生成し、計算機に設けられた出力端子から印刷装置に出力する必要がある。

そして、引用例には、「ハードコピー信号」について詳しく説明されていないが、その送出先等について、以下に示すように解することができる。

即ち、引用例に記載された「文字出力機(14)が画像表示器の画面に形成した画像を出力紙(9)上にプリントするために送出するハードコピー信号」(2頁右下欄8行ないし10行)なる記載から、ハードコピー信号は文字出力機(14)から送出されるものである。

そして、引用例に記載された「(13)はコンピュータであって、入力データを処理する処理機(3)(処理機(1)とあるは処理機(3)の誤記)の端末に文字出力機(14)が接続されている。」(同欄4行ないし6行)との記載から、文字出力機(14)は、入力データを処理する処理機(3)と同様にコンピュータ(13)の構成要素である。

したがって、ハードコピー信号はコンピュータ(13)から送出される信号といえる。

そして、「ハードコピー信号」は、文字どおり「ハードコピー」を得るための信号と解釈できることは明らかであるので、その送出先はハードコピーを出力する印刷装置である。このことは、ハードコピー信号を送出する目的からみて当然のことである。

してみると、引用例記載の「ハードコピー信号」は、コンピユータ内の情報の「ハードコピー」を得るための信号であり、コンピユータから印刷装置に送出される信号であるといえる。

また、文字出力機(14)からインタフエース(15)に入力されるハードコピー信号には、印刷装置への出力フオーマツトに従った印刷情報と印刷装置に対する制御情報という2種類の情報を含むことは明らかである。

以上のとおりであるから、引用例記載の「ハードコピー信号」は、コンピユータ内の情報の「ハードコピー」を得るために、コンピユータから印刷装置に送出される信号であり、本願発明でいう印刷装置への出力フオーマツトに従った印刷情報及び少なくとも前記印刷装置に対する制御情報を含むものである。

ロ. 「インタフエース(15)」について

一般に、インタフエースとは、「二つ以上の装置が接続されている境界部分で、接続のための回路やその手段、ハードウェアであるインタフェース回路のほか、ソフトウェアによる接続の規約などを含めてインタフェースという。一般に二つ以上の装置が接続される場合、相互のデータ形式や生成速度などが異なっている。そのため、これらの間でデータ転送を行う場合は、接続のための際の機械、電気、ソフトウェアの仕様が決定される。機械的仕様は、コネクタの種類やピン配置などに関するもの、電気的仕様は、信号の種類、電圧・電流、時間的タイミングに関するものであり、ソフトウェア的仕様は、信号を送る手順や意味づけなどに関するものである。」と説明されている。(乙第1号証参照)

これによると、例えば、装置Aと装置Bとをインタフエースを介して接続し、装置Aから装置Bにデータ転送を行う場合、装置Aからインタフエースに入力される信号に含まれる情報の内容と、インターフエースから装置Bに送出される信号に含まれる情報の内容は、同じものであるといえる。

引用例に記載された「インタフエース(15)」は、上記したインタフエースと同じ範疇に属するものであり、文字出力機(14)と変換装置(16)とを電気的に接続し、文字出力機(14)から送出したハードコピー信号を変換装置(16)に転送するための電気的処理を施すもの、即ち、文字出力機(14)が送出するハードコピー信号の情報の内容を変更せずに変換装置(16)に送出するものであるといえる。

ハ. インタフエース(15)の出力信号について

引用例の第3図には、文字出力機(14)とインタフエースとは結合して一体化したものであることが図示され、この図示によると、両者は、電気的に直接接続されていることは明らかである。したがって、文字出力機(14)の送出するハードコピー信号はインタフエース(15)に直接入力される。

そして、上記出力信号の送出先は変換装置(16)であることも考慮すると、上記記載は、文字出力機(14)からインタフエース(15)に直接入ったハードコピー信号は、インタフエース(15)により電気的処理を施され、上記出力信号として変換装置(16)に送出されるということを表している。

即ち、上記出力信号にはハードコピー信号が含まれることは明らかである。

〈2〉 原告は、本願発明においては、出力信号は「入力データを処理して送出」したものに限られず、予めコンピュータ等が保持しているデータを処理して送出したものも含まれる点で引用例記載の発明と相違すると主張する。

本願特許請求の範囲においては、単に「情報処理装置より印刷装置への出力フオーマツトに従った印刷情報及び少なくとも前記印刷装置に対する制御情報を含む出力情報を受信する受信手段」と記載されているのみであり、情報処理装置よりの出力信号が、入力データを情報処理装置で処理したものであっても、予め情報処理装置に保存されたものであっても、いずれの信号でもよいのである。

一方、引用例記載の発明における出力信号は、コンピユータが入力データを処理して送出したものである。(同公報2頁左下欄12行、13行)

したがって、本願発明の情報処理装置及び引用例記載の発明のコンピユータは、共にその「出力信号」が、入力データを処理して送出したものを対象とする点で共通する。

〈3〉 原告は、続いて、本願発明と引用例記載の発明とは、「出力信号」、「処理」、「変換」の内容が異なる旨主張するので、これについて反論する。

イ.本願発明の「情報処理装置」と引用例記載の「コンピユータ(13)」との対応関係について

引用例の2頁右下欄4行ないし12行の記載から、

コンピュータ(13)が、処理機(1)、及びインタフエース(15)が付属した文字出力機(14)から構成されることは明らかであり、また、引用例の第3図を参照すると、文字出力機(14)が送出したハードコピー信号は、インタフエース(15)に入り、そこで必要的な電気的処理を施された後、インタフエース(15)からコンピユータ(13)の外部装置に送出されることも明らかである。

また、上記「文字出力機(14)が画像表示器め画面に形成した画像を出力紙(9)上にプリントするために送出するハードコピー信号」なる記載から、ハードコピー信号は、出力紙(9)上にプリントするために送出されるものであるから、上記ハードコピー信号を受けて出力紙(9)上にプリントするための印刷装置が必要なことは明らかである。(第1図参照)

したがって、上記ハードコピー信号は文字出力機(14)に付属するインタフエース(15)から、コンピユータ(13)の外部装置である上記印刷装置に送出されるものであるから、印刷装置への出力フオーマツトに従ったものでなければならないことは当然のことであり、また、引用例記載の「コンピユータ(13)」も「印刷装置への出力フオーマツトに従った出力情報を出力する」という機能を有することは明らかであって、本願発明の「情報処理装置」に対応するものである。

ロ.本願発明の「受信手段」と引用例記載の「画像情報読取機(17)」との対応関係について

引用例記載の「画像情報読取機(17)」は、「コンピュータ(13)の処理機(1)が入力データを処理して得た画像を文字出力機(14)のインターフエース(15)が画情報として出力する出力信号を入力して、この出力信号から画情報を一語ずつ読み取って、読み取った順序に画情報メモリ(18)に送入するものであり」(2頁右下欄17行ないし3頁左上欄2行)、また、上記イ.で述べたように、インタフエース(15)はコンピユータ(13)の構成要素であり、かつ、コンピユータ(13)の出力信号は印刷装置への出力フオーマツトに従ったものであるので、引用例記載の「画像情報読取機(17)」も、「情報処理装置より印刷装置への出力フオーマツトに従った出力情報を受信する」という機能を有するので、本願発明の「受信手段」に対応するものである。

ハ.本願発明の「変換出力手段」と引用例記載の「字素信号発生回路(19)、信号変換回路(20)、回線制御機(21)」との対応関係について

引用例には、次のとおり記載されている。

「画情報メモリ(18)は、画像情報読取機(17)から送入される画情報を一旦メモリ内に記憶して蓄え、ファクシミリ受信機(12)が処理できる速度で順次一語宛読出してこれを字素信号発生回路(19)に送入する。

字素信号発生回路(19)は、画情報メモリ(18)から逐次送入される一語一語をファクシミリ受信機が一字として処理出来る字素に分解して、更にこれをシリアルドットデータに変換して字素記号を形成して、この字素記号を信号変換回路(20)に送入する。

信号変換回路(20)は、字素信号発生回路(19)から送入された字素記号を帯域圧縮等ファクシミリ装置として必要な信号処理を施してファクシミリ信号を形成し、このファクシミリ信号をファクシミリ受信機(12)に送入すれば、ファクシミリ受信機(12)が直ちに用紙の表面に画像を印字できる印字信号に変換してその出力端より出力する。

この変換装置(16)の中には更に回線制御機(21)が設けられ、信号変換回路(20)と多数のファクシミリ受信機(12a)、(12b)、…、(12n)に接続された多数の回線(22a)、(22b)、…、(22n)の信号入力端との間に接続されている。」(3頁左上欄3行ないし右上欄3行)

この画像情報読取機(17)は、上記ロ.で述べたように、「情報処理装置より印刷装置への出力フオーマツトに従った出力情報を受信する」ものであり、上記イ.で述べたことから、この出力情報中に印刷情報を含むことは明らかであり、さらに、上記ファクシミリ信号はイメージ情報であるから、引用例記載の「字素信号発生回路(19)、信号変換回路(20)、回線制御機(21)」からなる構成も、「受信手段で受信した出力情報中の印刷情報を対応するイメージ情報に変換し出力する」という機能を有するので、本願発明の「変換出力手段」に対応するものである。

〈4〉 原告は、審決が、本願発明と引用例記載の発明とは、「情報処理装置より印刷装置への出力フオーマツトに従った出力情報を受信する受信手段と、該受信手段で受信した出力情報中の印刷情報を対応するイメージ情報に変換し出力する変換出力手段とを備える装置(出力インタフエース装置)」である点で一致するとした認定を争っている。

しかしながら、上記〈3〉イ.ないしハ.で主張したように、本願発明の「情報処理装置」、「受信手段」、「変換出力手段」と、引用例記載の発明における「コンピユータ(13)」、「画像情報読取機(17)」、「字素信号発生回路(19)と信号変換回路(20)及び回線制御機(21)」とは、それぞれ同様の機能を有するので、審決の上記一致点の認定に誤りはない。

〈5〉 なお、原告は、相違点〈1〉中の引用例記載の発明についての認定には誤りがあると主張するが、引用例記載のインタフエース(15)が送出する出力信号は、画像を走査して得た画情報であるイメージ情報を含むと共に、情報処理装置内のキヤラクタコード情報をも含むものと解される。

引用例に記載された変換装置に送出される出力信号であるハードコピー信号は、〈3〉イ.で述べたように、印刷装置にも送出されるので、本願発明と同様に汎用データであり、本願発明と何ら変わらないものである。

(2)  取消事由2(相違点〈1〉ないし相違点〈3〉に対する判断の誤り)について

〈1〉 原告は、審決の相違点〈1〉に対する判断について、引用例記載の出力情報を印刷装置向けの情報であると誤認している旨主張する。

引用例に記載された出力信号(出力情報)であるハードコピー信号は、既に(1)〈3〉イ.及び(1)〈5〉で述べたように、印刷装置にも送出されるものであるので、引用例記載の出力信号(出力情報)は印刷装置向けの情報である。

したがって、審決の相違点〈1〉に対する判断に誤りはない。

〈2〉 原告は、審決の相違点〈2〉及び相違点〈3〉に対する判断についても、引用例記載の出力信号を印刷装置向けの印刷情報及び制御情報であると誤認していると主張する。

原告も、「コンピユータを含む情報処理装置から出力される印刷装置向けに送られる出力情報は、一般に、漢字キヤラクタデータ、文字パターンデータあるいはイメージデータ等の印字する信号そのものの印刷情報と、印刷にあたり文字の種類、印字形式あるいは記録紙のどの部分に印刷するか等の制御情報を含むことはきわめて普通のことであり、この2つの情報により所望の印刷がなされるものである。」という審決の認定は争っておらず、また、上記のように、引用例に記載された出力信号であるハードコピー信号は印刷装置向けの情報であるので、印刷装置向けの印刷情報と制御情報を含むことは明らかである。

原告は、「引用例には、キヤラクタコードであるかイメージデータであるかを判断することについては何一つ記載がなく、引用例記載の発明において出力されるのは、単なる「画情報」であり、上記2種の情報であるとすることは到底できない」と主張するが、前記(1)〈5〉で述べたとおり、引用例記載の出力信号はキヤラクタコード情報及びイメージ情報を含むものであるから、原告の主張は失当である。

第4  証拠関係

証拠関係は、本件記録中の書証目録記載のとおりであるから、これをここに引用する。

理由

第1  請求の原因1(特許庁における手続の経緯)、同2(本願発明の要旨)、同3(審決の理由の要点)は、当事者間に争いがない。

第2  そこで、以下原告の主張について検討する。

1  成立に争いのない甲第3号証(本願公報)、同第4号証(手続補正書)によれば、本願明細書には、本願発明の技術的課題(目的)、構成及び作用効果について、次のとおり記載されていることが認められる。

(1)  本願発明は、情報処理装置より印刷装置用に出力される印刷出力情報を、他のシリアル情報出力装置、例えばフアクシミリ装置等で処理可能なフオーマツトに変換する出力インタフエース装置に関する。(公報2頁左上欄3行ないし7行)

(2)  近年電子産業の発達により、コンピユータが小規模ユーザにも導入されるようになり、それと共に電信技術の発達により、広くフアクシミリ装置が使用されるようになった。

しかしながら、従来は、フアクシミリ装置とコンピユータは互いに独立した別個の装置であり、コンピユータで処理した情報を他のフアクシミリ装置に転送しようとする場合等は、一旦コンピユータに備えられたプリンタ装置に印刷出力し、しかる後、この印刷された用紙をフアクシミリ装置にセツトし、電話回線を介して他のフアクシミリ装置に転送しなければならなかった。

大型コンピユータ間においては、自動発信機能を備えて電話回線を直接発呼し、または、専用回線を用いて互いを接続し、直接情報の転送を行える。しかしながら、通信制御手段等は、各コンピユータメーカー毎に特有のものであり、同系等のコンピユータ間でない場合には、事実上情報交換は行えない。

一方、フアクシミリ装置においては、国際的に通信規格が統一されており、どのような装置間でも通信が行える。このため、あらゆる場所にコンピユータよりの出力情報を直接送ろうとするためには、コンピユータ等に直接フアクシミリ装置を接続すればよい。

しかしながら、フアクシミリ装置をコンピユータに接続するためには、出力データを特別のフアクシミリ用の出力データフオーマツトに変換して出力するためのプログラムを作成しなければならず、また、フアクシミリ装置を接続するための特別のインタフエースをも備えなければならなかった。

このため、パーソナルコンピユータ等の小型機を使用しているユーザや、プログラムを開発できないユーザ等は、フアクシミリ装置を接続したくとも接続できないのが実情であった。(同2頁左上欄9行ないし右下欄2行)

(3)  本願発明は、上記問題点を解決することを目的とし、要旨記載の構成(手続補正書の特許請求の範囲の補正1頁3行ないし20行)を採用した。(公報2頁右下欄4行ないし6行)

(4)  本願発明によれば、情報処理装置に一般的に備えられている通常の印刷装置に対する出力情報を、他の出力装置、例えばフアクシミリ装置で、そのまま用いることができる1ビツト走査行毎のイメージ情報に変換して出力することができる。このため、情報処理装置に特別の出力データフオーマツト作成の負担をかけず、容易に他の出力装置を接続するとの通信が可能となる。(同9頁左上欄13行ないし右上欄5行)

2  次に、原告主張の取消事由について検討する。

(1)  取消事由1(一致点及び相違点〈1〉の認定の誤り)について

〈1〉 まず、引用例記載の発明について検討するに、引用例には、「コンピユータが出力した画像情報をオンラインで伝送して回線端のフアクシミリ受信機が画像を記録する画像情報の伝送装置に関する発明」が開示されていること、この発明は、「従来の伝送装置の欠点を除去するためになされたものであって、コンピユータが入力データを処理して送出した出力信号を、フアクシミリ受信機で処理できる記録信号に変換して、この記録信号をフアクシミリ受信機が接続された回線に送出する変換装置を設けて人手操作の介在を除去する事により、中継操作の手間を省いて大量の画像情報を迅速正確に伝送出来る画像の伝送装置を提供する」ことを目的としていることは、当事者間に争いがない。

そこで、まず、引用例記載の「ハードコピー信号」の意味について、検討する。

引用例には、「(15)は文字出力機(14)に付属するインターフェースであって、文字出力機(14)が画像表示器の画面に形成した画像を出力紙(9)上にプリントするために送出するハードコピー信号を利用する事により、画像を走査して得た画情報を含む出力信号を送出する。」と記載されていることは、当事者間に争いがない。

この記載からすると、ハードコピー信号はコンピユータ(13)、即ち、情報処理装置を構成する文字出力機(14)から出力されるものであること、ハードコピー信号は文字出力機が画像表示器の画面に形成した画像を出力紙にプリントするために送出する信号であること、及び、インタフエースがハードコピー信号を利用することにより画像を走査して得た画情報を含む出力信号を送出することが開示されていることが認められる。

しかしながら、この記載及び引用例の他の記載部分をみても、引用例記載のハードコピー信号に印刷情報と制御情報(印刷情報の他に制御情報)が含まれることが開示されていると認めることはできない。上記引用例の記載において「ハードコピー信号を利用することにより」とあることからも、インタフエース(15)から出力される信号が「ハードコピー信号」そのものであるともいい難い。

次に、引用例記載の「出力信号」についてみるに、同じく上記記載からすると、インタフエース(15)はハードコピー信号を利用して出力信号を送出するものであると認められる。

引用例には、さらに、次のように記載されていることは、当事者間に争いがない。

「画像情報読取機(17)は、コンピュータ(13)の処理機(1)が入力データを処理して得た画像を文字出力機(14)のインターフエース(15)が画情報として出力する出力信号を入力してこの出力信号から画情報を一語ずつ読み取った順序に画情報メモリ(18)に送入する。

画情報メモリ(18)は、画像情報読取機(17)から送入される画情報を一旦メモリ内に記憶して蓄え、ファクシミリ受信機(12)が処理できる速度で順次一語宛読出してこれを字素信号発生回路(19)に送入する。

字素信号発生回路(19)は、画情報メモリ(18)から逐次送入される一語一語をファクシミリ受信機が一字として処理できる字素に分解して、更にこれをシリァルドットデータに変換して字素記号を形成して、この字素記号を信号変換回路(20)に送入する。」

この記載によれば、引用例記載のインタフエースの出力信号は画情報であること、及び、この画情報は画像情報読取機(17)ので一語ずつ読み取って、読み取った順序に画情報メモリ(18)に蓄え、字素信号発生回路(19)で字素に分解して、字素信号を形成し、さらに、この字素信号を信号変換回路に送入するものであることが認められる。

ここで、「画情報」とは、画像情報読取機(17)で一語ずつ読み取られるのであるから、画情報と記載されてはいても、字素信号発生回路(19)でシリアルドツトデータに変換されるべき文字コード情報をいい、その信号形態は本願発明におけるキヤラクタコードに相当すると解すべきである。そうすると、この読み取った画情報を蓄える画情報メモリ(18)は、キヤラクタコードを記憶するというべきである。

次に、字素信号発生回路(19)は、この画情報メモリ(18)から逐次入力される一語一語をシリアルドツトデータに変換して字素信号を形成し、これを信号変換回路(20)に送入する。この回路において、入力信号中のコード情報は、シリアルドツトデータで表されるイメージ情報に変換されるものと認められる。

そうすると、インタフエースの出力信号がキヤラクタコードであることは認められるが、しかしながら、この出力信号は変換装置(16)に向けての出力信号であると認められ、この信号が制御情報を含んだ印刷装置向けの出力信号であると認めるに至らないし、前出甲第2号証を検討しても、引用例には、そのようなことを示唆する記載もない。また、引用例記載の文字出力機あるいはインタフエースに印刷装置が接続される記載もない。

そして、「コンピユータを含む情報処理装置から出力される印刷装置向けに送られる出力情報は、一般に、漢字キヤラクタデータ、文字パターンデータあるいはイメージデータ等の印字する信号そのものの印刷情報と、印刷にあたり文字の種類、印字形式あるいは記録紙のどの部分に印刷するか等の制御情報を含むことはきわめて普通のことであり、この2つの情報により所望の印刷がなされるものである」ことは、当事者間に争いがないのであるが、このことを考慮しても、前記認定事実に照らし、引用例記載のインタフエースの出力信号に上記印刷情報と制御情報(印刷情報の他に制御情報)が含まれているということはできない。

〈2〉 ところで、成立に争いのない乙第1号証の1ないし3(「情報・通信マイクロコンピュータ辞典」昭和61年1月20日丸善株式会社発行)によれば、同辞典には、イ.「ハードコピー」とは、「計算機内の情報を人間が読める印刷物の形で出力し、内容のコピー(複写物)を作ること、またはそれによって得られた印刷物。有形という意味でハードといわれ、プリンタ出力はその代表的な例である。これに対比させて、CRT画面上に出される情報表示は有形物として残せないので、ソフトコピーなどとよばれる。」(316頁)と記載されていることが認められ、さらに、ロ.「インタフェースとは、「二つ以上の装置が接続されている境界部分で、接続のための回路やその手段、ハードウェアであるインタフフェース路のほか、ソフトウェアによる接続の規約などを含めてインタフェースという。

一般に二つ以上の装置が接続される場合、相互のデータ形式や生成速度などが異なっている。そのため、これらの間でデータ転送を行う場合は、接続のための際の機械、電気、ソフトウェアの仕様が決定される。機械的仕様は、コネクタの種類やピン配置などに関するもの、電気的仕様は、信号の種類、電圧・電流、時間的タイミングに関するものであり、ソフトウェア的仕様は、信号を送る手順や意味づけなどに関するものである。」(21、22頁)と記載されていることが認められる。

被告は、イ.を根拠に、計算機(コンピユータ)内の情報のハードコピーを印刷装置から出力させるためには、ハードコピーを得るための情報、即ち、印字される内容そのものに関する情報と印刷装置に対する制御情報等を計算機(コンピユータ)内で生成し、ハードコピー信号として印刷装置に出力する必要があるから、引用例記載のハードコピー信号は印刷情報と制御情報を含む旨主張し、また、ロ.を根拠に、インタフエースに入力される信号と、このインタフエースから出力される信号に含まれる情報の内容は同一であるから、引用例記載のインタフエース(15)の出力信号にはハードコピー信号に含まれる印刷情報及び制御情報が含まれると主張する。

しかしながら、引用例には、ハードコピー信号に印刷情報及び制御情報が含まれることが開示されていないことは、前示のとおりであり、一方、文字出力機(14)とインタフエース(15)が電気的に接続されており、かつ、インタフエース(15)は、それに入力される信号と、それの出力信号に含まれる情報の内容が同一であるとしても、引用例記載の発明において、文字出力機から出力されたハードコピー信号のすべてがインタフエースに入力されるとはいえないから、被告の主張するように、インタフエースに入力される信号と、このインタフエースから出力される信号に含まれる情報の内容は同一であるとすることもできない。

〈3〉 また、被告は、引用例記載の画像情報読取機(17)についての「出力信号から画情報を一語ずつ読み取った順序に画情報メモリ(18)に送入する。」との記載において、この出力信号から画情報を一語ずつ読み取るためには、この出力信号に含まれる信号形態は、画情報と表現されているが、キヤラクタコードでなければならないことは明らかであり、したがって、インタフエース(15)が送出する出力信号は、画像を走査して得た画情報であるイメージ情報を含むと共に、情報処理装置内のキヤラクタコード情報をも含むものと解されると主張する。

しかしながら、引用例記載の画像情報読取機(17)は、インタフエースの出力信号から画情報を一語ずつ読み取って、読み取った順序に画情報メモリ(18)に送入するのであって、前示認定のとおりインタフエース(15)からの出力信号はキヤラクタコードであると認められること、上記「一語ずつ読み取って」と記載されていることはイメージ情報の読み取りとは考え難いこと等からして、画像情報読取機(17)がキヤラクタコードの他にイメージ情報を処理するということは、読み取れないというべきである。

また、引用例記載の変換装置(16)に関する記載をみても、イメージ情報が送入された場合の処理方法や制御情報を解析する解析手段について記載されておらず、それらを示唆する記載も見いだせない。

〈4〉 このようなことからして、引用例記載の発明において、インタフエース(15)からの出力信号が印刷装置向けの制御情報までをも含むと解すること、また、イメージ情報までをも含むと解することは、いずれもできないというべきである。

したがって、本願発明と引用例記載の発明とが「情報処理装置より印刷装置への出力ラオーマツトに従った出力情報を受信する受信手段と、該受信手段で受信した出力情報中の印刷情報を対応するイメージ情報に変換し出力する変換出力手段とを備える装置(出力インタフエース」である点で一致するとした審決の認定は、「印刷装置への出力フオーマツトに従った出力情報」の内容において両発明の構成が異なるから、誤りであり、また、本願発明における「情報処理装置」、「受信手段」、「変換出力手段」は、引用例記載の発明における「コンピユータ(13)」、「画像情報読取機(17)」、「字素信号発生回路(19)と信号変換回路(20)及び回線制御機(21)」にそれぞれ対応するとの認定も、各手段の有する機能が異なっているから、誤りといわなければならない。

(2)  取消事由2(相違点〈1〉ないし相違点〈3〉に対する判断の誤り)について

引用例記載の発明において、インタフエース(15)からの出力信号が印刷装置向けの制御情報をも含むと解することができないことは、前示認定のとおりであるから、審決の相違点〈1〉に対する判断は誤りである。

(3)  そうすると、審決における本願発明と引用例記載の発明の一致点の認定及び相違点〈1〉に対する判断は誤っており、その誤りは審決の結論に影響を及ぼすものであることは明らかであるから、その余の点について判断するまでもなく、審決は、違法であって、取消しを免れない。

第3  よって、本件審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は理由があるので、これを認容することとし、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 竹田稔 裁判官 関野杜滋子 裁判官 持本健司)

別紙図面 1

図面の簡単な説明

第1図は本発明に係る一実施例の概略ブロツク図、

第2図は本実施例の詳細構成図、

第3図は本実施例の機能ブロツク図、

第4図は本実施例のコマンド解析、及び、データ変換制御を示すフローチヤートである.

図中10…情報処理装置、20.35…ブリンタ、30…出力インタフエース装置、3.1…スイツチング回路、32…エミュレータ回路部、33…フアクシミリ制御装置、34…リーダ、36…モデム、37…NCU、39…キーボード、41.42…他のフアクシミリ装置、45…電話機、51.61…CPU、52…パラレルインタフエース、53…シリアルインタフエース、54フオントメモリ、55…外字登録メモリ、56.65…PROM、57…イメージメモリ、58…X-Y変換回路、59…EIインタフエース、60…RAM、62…通信制御部、63…圧縮伸長部、66…リーダインタフエース、67…ブリンタインタフエース、68…蓄積メモリ、69…キーボードインタフエース、70…コマンド解析部、82…カラムバツフアである.

〈省略〉

〈省略〉

別紙図面 2

図面の簡単な説明

第1図と第2図は従来の伝送装置の構成を示す接続図、第8図はこの発明の一実施例の構成を示す接続図である。

図に於て、(12)はファクシミリ受信図、(13)はコンピュータ、(16)は変換装置、(17)は画像情報読取図、(18)は画情報メモリ、(19)は字素信号発生回路、(20)は倍号変換回路、(21)は回線制御図、(22)は回線である。

尚各図中、同一符号は同一または相当部分を示すものとする。

〈省略〉

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